クリスチャン・デュクロー - Christian Ducroux - [ ボジョレー地方 レニエ ]

   

“クリスチャン・デュクロー

ボジョレーのオアシスのような畑...多くを語らずとも「生き方」がワインを通して語りかけます。

1971年からワインつくりを始め、1980年にはすでに有機栽培を実践していたクリスチャン・デュクロー。ボジョレーだけでなく、フランス全体を見渡しても指折り数えるヴァンナチュールの先駆者の一人です。淡々と誠実に日々の畑仕事をこなし、素朴で静かな生活を大切するクリスチャンは、ほとんどサロン(試飲会)やイベントなどに参加することがありません。長年にわたり自然体で畑仕事と向き合ってきたクリスチャンは、彼自身がナチュールを体現しているような存在です。ナチュールとは、生き方とは、そんな哲学を彼自身が語り啓蒙することはありませんが、50年以上にわたり自然をリスペクトし畑と向き合い、ワインつくりを続けてきた彼の存在そのものが「ナチュールとは」を無言で語りかけます。わずか6.5haの畑。畑に生える草木や周囲の自然を大切にしながら、ビオディナミのカレンダーに沿って栽培。ボジョレーの他の畑と比べてもブドウの樹と樹の間にゆとりがある畑には、ブドウと一緒にリンゴの木やアプリコットの木が植えられ、他では見た事のない不思議な空間です。畑のすぐ隣には彼の育てる野菜畑があり、ガチョウや鶏を飼育しています。訪問中、ふとクリスチャンが飼育小屋の柵を開けると、ガチョウや鶏がブドウ畑の中を所狭しと走り回りはじめました。それを透き通るような瞳と優しい笑顔で見守るクリスチャン。青空の下、ブドウ畑と足元に生える豊富な草木や根菜、高さのあるアプリコットやリンゴの木にはその上でさえずる小鳥たち、心地よく走り回る小動物たち...言葉を必要としない、心と体で感じるクリスチャンの哲学。感動的なヴィニュロンです。カイナとエルバと名付けられたクリスチャンの愛馬とともに畑を耕作。50年に渡る誠実な畑仕事の中で、根は地中深くまで伸び、土の中もふかふかです。見上げる空から目の前のブドウ畑、そして土の中も、全てが大きな自然循環の営みの中にあることを肌で感じ、その中に立っている私たちの生物としての感覚も研ぎ澄まされ開放されてゆく感覚。「育み食す」人が誕生してから長い年月そうしてきたシンプルな「農」という概念は、人が生きていく上で切っても切り離せないものだけど、その中にこれだけの大きな「自然」を残すことができる。「50年間畑と向き合ってきたけど、10年ほど前からやっと少しずつ、自然や畑が理解できるようになってきた。」と語るクリスチャン。「土があり畑がありブドウがあってその先にワインがある。根幹にあるものが良くないと外部からいろんなものを足さなくてはいけない。根幹にある土が良くないと良いワインはできない。」それぞれの言葉の重みを感じます。彼の哲学・思考、目に映る畑が私たちの心に忘れかけていたものへの"気づき"を与えてくれます。感動的で学ぶことの多い素晴らしい生産者です。

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